本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
前回は「デザイン思考の浸透による組織開発」について。ユーザーを主軸とした視点での組織づくりに関する考え方を事例とともにご紹介しました。
今シリーズは企業が成長する上で欠かせないミドルマネージャーについて、「リーダーシップ」「コミュニケーション」「マネジメント」「組織開発」をテーマにトピックをご紹介してきました。
シリーズ最終回の今回は、これまでの内容を振り返り、補足を行いつつミドルマネージャーのあるべき姿を考えます。
支配ではない、もう1つのリーダーシップ
明確なビジョンを示し、部下の主体性を引き出しながら目的達成へ導く…そんな「変革型リーダーシップ」について、第3回コラムでご紹介しました。
もう1つ、かつての支配型リーダーシップとは異なるリーダーシップのあり方として、ロバート・K・グリーンリーフの提唱した「サーバントリーダーシップ」が注目されています。
「明確なビジョンを示し部下の主体性を重んじ成果へ導く」基本的な部分については変革型リーダーシップと同じですが、より部下の目線に立って行動を支援するという特徴があります。
国内の事例では2001年に資生堂の社長に指名された池田守男氏によって実践されたことが有名です。もともと “縁の下の力持ち” だった池田氏は、強いトップダウンによるリーダーシップではなく「会社を再建する」「新しく生まれ変わらせる」というミッションの下でサーバントリーダーシップ「店頭基点」を念頭に組織の改革を実施しました。
サーバントリーダーシップにおける重要な要素は「傾聴」です。現場の声を汲み取るミドルマネージャーもまた、現場や顧客による生の声にしっかり耳を傾けることでさまざまなヒントを得られることでしょう。
やる気マトリクスのフレームワーク
また、リーダーシップの発揮には部下とのコミュニケーションが大切だというお話も紹介しました。
このコラムでは、手法の1つとしてコーチングについて述べました。
一口にコミュニケーションと言っても、相手がどんな時にどんな関わりを持てばいいのでしょうか。ここで「やる気マトリクス」から段階における関わり方とコミュニケーションの要点についても補足していきます。
やれん気(新人)
まだ自信のない部下には、具体的で達成可能な目標をきめ細かく設定しましょう。小さな成功を重ねることで “やれる気” のフェーズへ進めます。
やれる気
この段階で大切なのが「手を離す」こと。部下に “任せてやらせてみる” ことで、理想的な ”やる気” へのフェーズへと導きます。
やらん気
ただ自信がないというわけではなく “やらん気” でいる部下には、やらせる前にコミュニケーションを増やして理由を突き止める必要があります。
コミュニケーションの要点
やる気マトリクスで整理できるように、コミュニケーションのアプローチは相手に合わせて変えていかなければなりません。
以下に、ミドルマネージャーが心得ておきたいコミュニケーションの要点をご紹介します。
- 相手の立場にたったわかりやすい指示
- 急に指示するのではなく予告が大切
- 相手に合わせて表現を変える
- 何の問題もない時にも意識的にコミュニケーションをとる
- 信頼の階段は一歩一歩しか構築できず崩れる時は一瞬
- 人を育てるポイントは手を離すこと(守破離)
組織変革の計画と実行
今シリーズの後半は「マネジメントと組織開発」をテーマに組織の要であるミドルマネージャーのあり方について考えました。
【コラム3-10】では、まず組織を構成する要素を整理し、組織の健全性を考える手法をご紹介しました。またデザイン思考の浸透による組織改革について事例とともに解説しています。
【コラム3-11】大企業も次々に取り組むデザイン思考の浸透による組織開発
ミドルマネージャーが組織を変革させるには、基本的な方針の決定や計画とともに上長からの承認はもちろん他部署の巻き込みが必要です。
決して簡単なことではありませんが、計画に続いての実行フェーズにおいても身体の末端まで血をめぐらせるように現場へも届きやすく自らのマネジメント力を発揮できるのが醍醐味ではないでしょうか。
来月からの次シリーズでは、全12回でマネジメントの「実行プロセス」に焦点をあててさまざまなトピックをご紹介していきます。
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