本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
今シリーズ後半は「マネジメントと組織開発」をテーマにミドルマネジメント層が考えるべきポイントや手法をご紹介していきます。
前回は「ミドルマネジメントと組織開発」について。マネジメントとの違いやフレームワークについてご紹介しました。
今回は組織開発におけるデザイン思考について。ユーザーを主軸とした視点での組織づくりに関する考え方を事例とともにご紹介していきます。
デザイン思考の特徴とプロセス
ロジカルシンキングが事象や課題を起点に考えるのに対し、デザイン思考はユーザーの共感を起点にして考え、課題や潜在的ニーズを見つけ出すことで解決へ繋げます。
デザイン思考は他の思考法と同様に企業や社会が抱える課題を解決するのを目的としていることに変わりはありませんが、”人間を中心” に考えるという特徴があります。
具体的には、デザイン思考ではまずユーザーに共感し、関わり、観察することから始まります。思い込みを捨て、ユーザー自身も自覚していないような本質的な欲求(インサイト)を発見しましょう。
続いてインサイトをもとに問題を定義し、解決のアイディアを見出し、プロトタイプの作成とテストを繰り返します。
プロトタイプはユーザーにアイディアを説明するためだけでなく、社内でアイディアについて議論するためにも重要です。
テストの結果によってはアイディアを棄却することも大いにあり得ます。仮説思考で一連の流れをスピーディーに進行することで、プロジェクトにかけた時間や費用といったコストを抑えられるでしょう。
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デザイン思考は新規事業や新商品のためのイノベーティブなアイディアを出すために注目されている思考法ですが、組織開発においても有効な考え方です。
デザイン思考の浸透による組織改革
IBMでは、2013年からデザイン思考を活用した取り組みを行っています。まず社内や顧客に対しデザイン思考の教育を行い、2017年〜2019年頃は実際にデザイン思考によって問題解決や新たな価値の創出を推進していきました。
すると、プロジェクトの直接的な成果だけでなくチーム内の「コミュニケーション改善やパフォーマンスの向上」「メンバーが自分の意見を共有しやすくなった」といった効果が現れたのです。
2020年頃からは組織変革のためにデザイン思考を活用する方向へシフトしており、実際に成果が現れ始めています。
(参照元:https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/transformation-to-human-centered-organization-through-design-thinking/)
IBMが副次的にデザイン思考による組織開発の効果を実感したのに対し、コニカミノルタは2017年から「課題提起型デジタルカンパニー」を目標として掲げデザイン思考を急ピッチで現場に取り入れています。
(参照元:https://mctinc.jp/blog/konicaminolta_case-study_03)
社長直轄組織がデザイン思考の浸透を牽引したものの、当初は社員から「なぜデザイン思考が必要なのか?」という質問が多く、地道なマインドセットが必要でした。
年々重要性が認識されているデザイン思考ではありますが、経営者によるデザイン思考の導入とともに現場レベルまで浸透させるためのミドルマネジメント層の働きは不可欠であると言えるでしょう。
組織開発におけるデザイン思考では、共感の対象が商品・サービスのユーザーではなく社員というだけで、その本質やプロセスに変わりはありません。
違う点があるとすれば、その過程において信頼が生まれ、よりパフォーマンスを発揮しやすい組織づくりに繋がるという点です。
まだトップダウンによるデザイン思考の浸透が難しいという場合でも、まずは部下や同僚との対話を重ねて共感を起点に組織の課題解決へ向けて取り組んでみてはいかがでしょうか。
次回は今シリーズの最終回。これまでの内容を振り返り、補足を行いつつミドルマネージャーのあるべき姿や考え方についてご紹介していきます。
ピンバック:ミドルマネージャーのあるべき姿とは – シンキングパートナーズ合同会社