本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
今シリーズ後半は「マネジメントと組織開発」をテーマにミドルマネジメント層が考えるべきポイントや手法をご紹介していきます。
前回はマネジメントとコントロールの違いについて。日本語では同じ ”管理” と訳せる職能について目的やアプローチの違いについてご紹介しました。
今回は「ミドルマネジメントと組織開発」について。マネジメントとの違いやフレームワークについてご紹介していきます。
マネジメントと組織開発の違い
いかに社員個人の能力やモチベーションが高くとも、組織としての目標や協働体制が整っていないと最終的な成果には結びつきません。そこで必要なのが「組織内の当事者が自らの組織を効果的にしていくことや、そのための支援」である “組織開発” です。
マネジメントも成果を出し目標を達成するためにプロセスを改善することは同様ですが、より人と人の間に何が起こっているかに着目し、多くの人に参加を促し、当事者主体であることを目指すのが組織開発です。
運動会や飲み会といった伝統的なコミュニケーション活性化による人間関係の改善、チームビルディング研修などが通用したのは遠い昔。働き方や価値観が大きく変化し続けている現代においては、対話などのコミュニケーションが大切であることはこれまで述べてきた通りです。
ここで、組織開発を施策検討・実行・評価のPDSで実施するとして現状の分析やアクションプランの作成といった組織開発の第一歩に利用できるフレームワークを2つご紹介します。
組織を構成する要素と関係性を考える7S
組織の要素を7つのSで表す7Sモデルは、組織の全体像と要素間の関係性を捉えるためにとても有用なフレームワークです。
出典:TJ.ピーターズ&R.H.ウォータマン『エクセレント・カンパニー』(講談社 1983年)P.41 より作成
7つの要素は以下のようにハードとソフトに分けられ、また組織の根本である ”共通の価値観” は中央に配置するのがポイントです。
ハードのS(構造に関するもの)
- Structure(組織):組織の形態や構造
- Strategy(戦略):競争優位性を維持するための事業の方向性
- System(システム):人事評価や報酬、情報の流れ、会計制度など、組織の仕組み
ソフトのS(人に関するもの)
- Staff(人材):社員や経営者など個々の人材の能力
- Shared Value(価値観):社員で共通認識を持つ会社の価値観
- Skill(スキル):営業力、技術力、マーケティング力など組織に備わっている能力
- Style(スタイル):社風や、組織の文化
例えばある企業が、売上増加のためにマーケティング戦略を見直そうと考えた場合、7Sモデルを用いて分析を行います。その結果、戦略やスキル、スタッフには問題がないことが分かりましたが、構造やシステム、スタイル、共有価値観に改善の余地があることが分かりました。
そこで、アクションプランとして以下のような取り組みを実施することが考えられます。
構造の改善:販売チームとマーケティングチームの協力体制を強化するため、両チームのコラボレーションを促進するためのプロセスを構築する。
システムの改善:販売データと顧客データを収集するためのCRMシステムを導入する。
スタイルの改善:マーケティングチームのリーダーによる、顧客志向のマーケティングを推進する。
共有価値観の改善:顧客満足度を向上させることを最優先事項とする、全社員に対してのコミュニケーションやトレーニングを実施する。
組織の健全性を考えるGRPIモデル
1972年、組織理論家のディック・ベックハード氏は組織の健全性を考えるフレームワーク「GRPIモデル」を提唱しました。
GRPIモデルでは組織づくりにおける4つの要素に着目し、それぞれが健全に機能しているかを順にチェックしていきます。
Goal(目標)Role(役割)Process(手順)Interaction(関係性)それぞれの頭文字をとって「GRPI(グリッピー)」と名づけられました。
「目標は明確で、浸透しているか?」
「適切な人が役割を担っているか?」
「役割を遵守するために、育成の視点をもっているか?」
「必要な手順は明確で、伝わっているか?」
「チーム内で日々コミュニケーションが行われているか?」
といったように、対話と合意形成を進めていきます。ポイントは確認する順番で、G→R→P→Iの順に行うことによって本質に近づけます。
7Sによる事前の組織評価や、7S検討した施策を実行し評価するタイミングで試してみてはいかがでしょうか?
自律した組織であるために
組織開発は「一度取り組んで終了」という簡単なものではありません。組織が成長し続けるよう、段階ごとに施策を明確にし継続して取り組む必要があります。最初はスモールスタートで取り組み、効果検証と仕組みづくりを繰り返していきましょう。
「あの部署が悪い」「現場が悪い」といった他責思考が蔓延していては組織として思考停止しているのと変わりがありません。
組織開発においてもまた、リーダーシップを発揮しながらコミュニケーションを重ね多方面へ働きかけるミドルマネージャーという立場は重要です。
次回は「組織開発とデザイン思考」について。
今回、組織開発の基本的な部分をご紹介しましたが、デザイン思考の視点からより人間中心かつ変化の多い時代に立ち向かえる組織であるために必要なポイントをご紹介していきます。
ピンバック:【コラム3-11】大企業も次々に取り組むデザイン思考の浸透による組織開発 – シンキングパートナーズ合同会社