本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
前回までは現代に求められるリーダーシップについて、まずビジョン・目的を共有することと何故やるのかを明示することの重要性についてご紹介しました。
今回は前回までのコラムを振り返りながら、部下のモチベーションを向上させるリーダーの姿について考えます。
78文字が示す、リーダーのあるべき姿
ここで、今シーズン最初のコラムで紹介した山本五十六の名言全文を見てみましょう。改めて読んでみると、第2~4回のコラムでご紹介してきたようなリーダーの姿を、このたった78文字で端的に表していると言えるのではないでしょうか。
やってみせ
言って聞かせてさせてみて
誉めてやらねば人は動かじ話し合い
耳を傾け承認し
任せてやらねば人は育たずやっている
姿を感謝で見守って
信頼せねば人は実らず
例えば、まず部下にとって初めてのことであるならばゴールデンサークル理論の「Why・How・What」で説明しやらせてみる。
参考:【コラム3-4】そもそも何故やるのか?ゴールデンサークル理論によって部下のパフォーマンスを引き出すには
また部下の意見に耳を傾け、ポジティブな受け止め方をする。そして部下の存在を承認し、信頼関係を築く。心理的安全性の大切さを示しています。
参考:【コラム3-2】これからのマネジメントに必須の「心理的安全性」とは
人を動かすためには
職場での心理的安全性を高めるメリットの1つに「モチベーションの向上」があります。
そもそもモチベーション(motivation)とは、ラテン語のmovere(動かす)に由来。日本語では「動機付け」と訳され、これは「目的や目標などのある要因によって行動を起こし、それを持続させる心理的過程」を表す心理学用語です。
カタカナ語としても定着した「モチベーション」ですが、モチベーションが高いという意味を漠然と「やる気がある」といったように使われているケースも少なくありません。
しかし本来は「動く・行動する」という意味合いがあってこその「モチベーション」であり、部下のモチベーションを高めるということは行動へ繋げる動機付けを行うということ。
ビジネスにおける動機付けには外的なものと内的なものがありますが、現代においては内的な動機付けが重要であることは過去のコラムでもご紹介した通りです。
参考:【コラム(9)】内的な動機付けをもたらすのは?
心理的安全性を高め、日頃のコミュニケーションや1on1ミーティングによって、部下の働きがいや生きがいを理解した上で部下を導くのが現代のリーダーのあるべき姿と言えるでしょう。
かつて、業績にばかり目を向けて従業員のモチベーション低下が深刻となっていた株式会社LIFULL(2017年に社名変更)が行った改革のうちの一つに、社内コミュニケーションがあります。
マネージャーとメンバーの1on1ミーティングを重視し、コロナ禍でのリモートワークによってコミュニケーションの機会が減った際には「週に1回30分の1to1ミーティング」という目標数値を設定し、対話の時間を確保しました。
同社は他にも経営ビジョンの浸透や部署間での横断的なコミュニケーションを強化し、ベストモチベーションカンパニーアワード2017にて第一位を獲得しています。
大切なのは双方向であること
ここで、モチベーション向上のためのコミュニケーションが一方的にならないよう注意しなくてはなりません。
上司から部下への一方的な指示だけで終わらせないのはもちろんのこと、まず上司から自己開示することで部下の自己開示を促すことも有効です。これは「自己開示の返報性」と呼ばれ、相手の自己開示によって自分も相応の開示をしなければいけない気持ちになるという心理現象の一種です。
次回はこういった自己開示も重要な要素の1つであるコーチングの視点から、引き続き部下とのコミュニケーションについて考えます。
ピンバック:【コラム3-6】部下の自発性を引き出すコミュニケーション手法 – シンキングパートナーズ合同会社