本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
前回は今の時代に求められる変革型リーダーシップについてご紹介しました。
今回はメンバーの主体性を引き出し、モチベーションを高めるために求められるリーダーシップやコミュニケーション手法の中から「ゴールデンサークル理論」についてご紹介していきます。
Whyから始めよ
理想的なリーダーの姿がイメージできても、実際に人や組織を変えていくというのは並大抵のことではありません。「いったい何から手をつければいいのだろうか?」という方は、まず「Why」を伝えることから始めることが必要です。
あなたはサイモン・シネックが提唱したゴールデンサークル理論をご存知でしょうか。これは「why:なぜそうするのか(信念、目的、何のためするのか)」「how:どうやるのか(商品やサービスの説明、方法、理論)」「what:何をするのか(商品、サービス)」という物事の本質から説明することで聞く人の心を動かすというものです。
ポイントは「人は何を(what)ではなく、なぜ(why)に心を動かされる」ということ。ゴールデンサークル理論はAppleが演説やプレゼンテーションで取り入れているということでも知られています。まず本質的な問いである“Why”から伝えることで、多くの人々の心を動かし行動を促せたと言えるでしょう。
目的達成のための巻き込み力
ゴールデンサークル理論は消費者へ向けてだけでなく部下にも有効です。心を掴むことでモチベーションを上げ、部下が主体的に成果を出せるようになる姿は巻き込み型リーダーシップとも呼ばれます。
部下への日常的な指示ひとつをとっても、まず目的を明確に伝えるということが重要です。
例えば、「今週中に見込み客リストと顧客リストをまとめて欲しい」と指示を出したとしましょう。このリストづくり(what)を伝えた後に具体的な方法(how)を伝える、という説明をしてしまっていませんか? これではタスクの完了には支障がなかったとしても、主体性やモチベーションが上がる指示とは言えません。
ゴールデンサークル理論を用いると、例えば「来週に行われる新プロジェクト会議で使うために(why)顧客セグメンテーションされた(how)リストをまとめて欲しい(what)」といった説明の順序になります。
部下にとっては自分が作成したリストが重要な会議で使われるとわかればモチベーションが上がりますし、リストを使う目的が明確であればどのような項目でセグメンテーションするかなど主体的な提案が出てくることにも期待ができるでしょう。
ここで補足しておきたいのが、ゴールデンサークル理論は精神論のような類ではなく人間の脳の仕組みに対応しているという点です。
人間の脳は情報を得た際に大脳の大脳辺縁系に運ばれた後、大脳新皮質へと伝わります。大脳辺縁系は WhyやHow といった本能・感情を処理し、大脳新皮質は What にあたる合理的・分析的な思考を司るため、「Why」から伝えることでスムーズに行動を促すことができるのです。
ゴールデンサークル理論を活用して導く
部下に対してタスク(What)や方法(How)を指示することは日常的に行っていることでしょう。しかし、Whyを気づかせるような施策なしにWhatとHowのみ与えるのでは、想定通りかそれ以下の成果しか出てこないでしょう。
ここで部下に対して「なぜ、この業務やプロジェクトに取り組んでいるのか?」「なぜ、この作業が必要なのか?」といったWhyをあらかじめ示すことが重要です。
ぜひゴールデンサークル理論を活用したコミュニケーションを行いメンバーの主体性を引き出し、モチベーションを高めましょう。
ここまでは「実行」よりも前のフェーズで、次回からは「実行中」にリーダーがあるべき姿について紹介していきます。
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