本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
前回は問題解決に必要な「仮説思考」についてご紹介しました。
今回は検証にあたり知っておきたい分析手法について。分析にはさまざまな種類がありますが、今回は定量分析の手法を中心に事例とともにご紹介していきます。
データ分析で仕入れの意思決定を行う
ここで、あなたはある店舗の仕入れ担当だとしましょう。次の仕入れでの商品選定と価格設定を定量分析を行いながら考えていきます。
データのばらつきに注意する
「平均」は子どもの頃から慣れ親しんだポピュラーな手法ですが、データの「ばらつき」を捉えられていないことに注意が必要です。
これまでの販売実績から「商品Aの平均販売数量は月あたり50個だった」という分析結果が出たとしても「極端に購入数の多い日がデータに含まれていると、全体の平均値が押し上げられてしまう」ことがあります。そのまま平均値を鵜呑みにしてしまうと失敗してしまうかもしれません。
そこで考えたいのがデータのばらつきを示す「標準偏差」です。各データが平均値からどれくらい離れているかがわかり、どのくらいの幅で販売数が増減しているかや詳細な分析を行う糸口となります。 (参考: SCMにおいては、このプロセスで需要予測を実施)
データの関連性を考える
あるデータ同士に関連性があるかどうかを考えるには「相関分析」や「回帰分析」が代表的な手法です。相関分析は2つのデータの間に関連性があるかどうか(もしくは無いか)を考え、回帰分析では「データPが原因でデータQという結果である」という想定の元で考えられる違いがあります。
相関分析では、例えば「気温が高くなると商品Aは売れやすくなる」といった、片方のデータともう一方のデータが同様に増減する関連性を「正の相関がある」、逆に反対の関連性があることを「負の相関がある」と表現されます。
また、相関分析は関連性を見つけ出すだけでなく、関連性の「思い込みを払拭する」ためにも有効な手法です。
例えば当初は「年齢が上がるほど商品Bは売れやすくなるはず」という想定だったが、実際に年齢による相関分析を行ったところ関連性はなかった、というようなケースも考えられます。このようにデータ同士に関連の無いことを「無相関」と表現します。
相関と因果を混合しない
ここで、「データの結果を見ると関連性があるが、実際はそうではない」というケースに注意が必要です。
もし「アイスの売上と水難事故の件数には正の相関がある」という分析結果が出たとしても、実際に直接の関連性があるわけではなく、どちらも「気温と正の相関があったため」と考えられます。
冒頭で申し上げた通り、因果関係を分析するためには相関分析ではなく回帰分析の手法が使われます。因果関係を定量的に推定することにより、売上予想など推定結果を算出します。
データ分析でロジカル・クリティカルに考えよう
今回は若手社員もおさえておきたい基本のデータ分析の考え方についてご紹介しました。分析の手法はいくつもありますが、あらかじめ仮説を立てることを忘れないでください。どんなに正しい分析手法だったとしても、やみくもに使われたり課題の本質が見えてなければ意味がありません。
https://www.thinkingpartners.co.jp/2022/05/column2-11/
近年ではビッグデータやAIを活用したデータ分析が注目されています。しかしどんなに優れた手法でも、使う人間のロジカルかつクリティカルな思考によって成果が左右されます。
ぜひ今回のシリーズを今一度見直し、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングをあなたのビジネスで実践ください。
【コラム2-1】ロジカル・クリティカルに考えることから始めよう
【コラム2-2】演繹法・帰納法 論理的に答えを導く2つの手法
【コラム2-3】クリティカル・シンキングで本質を見極める思考を手に入れよう
【コラム2-4】MECEとは?ロジカルシンキングの基本概念
【コラム2-5】ビジネスのあらゆるシーンで活用できるフレームワーク、ロジックツリー
【コラム2-6】問題解決へ一歩踏み出す要素分析 whatツリー
【コラム2-7】根本原因を見つけ出す原因分析 whyツリー
【コラム2-8】改善策の決定に導く問題解決howツリー
【コラム2-9】目標達成にも活用されるロジックツリー
【コラム2-10】ピラミッドストラクチャーで伝えたいメッセージを論理的に整理する
【コラム2-11】現代のビジネスパーソンが身につけるべき「仮説思考」とは