本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
若年層を中心とした人材採用難が続くなかで、コロナ禍では社員教育や人材育成に対する課題・問題は顕在化してきているものの解決が先送りされているのが現状です。
企業に求められているのは単純な労働力だけでなく、将来的に事業の中核を担える人材。2018年版中小企業白書のデータによると中核人材の不足への対応は「教育訓練・能力開発の強化」で47.1%となっており、この段階では中核人材は社内で育成するという意向を持った企業が多かったことが分かります。
一方で、2021年のデータからは依然として人手不足が課題であるものの社内で育成する傾向は減少方向にあることがわかります。新型コロナウイルス感染拡大という大きな影響もあり複雑化する事業環境の中で、自社リソースだけでなく外部の知見も生かした経営戦略立案も必要となってきているのです。
また副業解禁の流れもあり、個人のスキルアップは自分自身で磨く傾向が高まっていると言えます。今回からの新シリーズでは、特に若手社員を想定して「会社の育成だけに頼らず自律的に学習する」ために、企業の中核人材たる問題解決能力を育む思考法やフレームワークをご紹介していきます。
本シリーズの第1回目はその第一歩である「ロジカルシンキング」と「クリティカルシンキング」について。
- ぼんやりとしか理解できていない
- 自分に当てはめたときにどう使っていいのかわからない
- ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違いがよくわからない
という方に、ぜひお読みいただければ幸いです。
ロジカルシンキングとは?
ロジカルシンキングとは論理的思考と訳される、「物事を体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく考える思考法」のこと。ただ漠然と物事を捉えたり主張するのではなく、考える目的を明確にして内容を結論と根拠を整理し、そのつながりをきちんと説明できる状態を言います。
例えばWEB広告の運用を検討する際「AパターンとBパターンの広告を出稿した結果、同じ金額でもAの方がCTR(クリック率)が高かったため、次回はAパターンに絞って予算をかけよう」といった考え方になります。
この時、事実をヌケモレ無く整理したり効果的にアイディアを発想するために様々な手法やフレームワークが活用されています。
クリティカルシンキングとは?
クリティカルシンキングとは批判的思考と訳されますが、日常的に使われている否定的な意味合いが強い「批判」とは全く異なることに注意しましょう。
批判的思考とは、考える際に前例や慣例に疑問を持つ姿勢のことを言います。
- そもそも前提としている条件が適切か?
- ステレオタイプによる決めつけをしていないか?
- もっと良い考えがあるのではないか?
など、多面的に問い続けながら物事の本質を見極めるための思考法がクリティカルシンキングです。
先程のWEB広告の例だと「Aパターンの広告の方がクリック率が高かったのは事実だが、そもそも比較する指標はクリック率が適切だろうか? CPA(購入や問い合わせなどのコンバージョン1回を獲得する単価)など他の指標はどうか」といった考え方になります。
思考の土台づくり
できているようで意外とできていない、ロジカルシンキングとクリティカルシンキング。それぞれを組み合わせながら日常的に取り入れたいスキルです。
変化の激しい現代において創造的な思考が必要なことはこれまでのコラムを読まれた方にはご承知いただいていることと思いますが、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングはその土台となります。
自分の頭の中で整理できるのはもちろんのこと、他者にわかりやすく伝えたり建設的なディスカッションを行うためにも有効です。
世にたくさんある思考法やフレームワーク。コンサルタントが利用するイメージを持っている方も多いかと思いますが、本来は専門家に限らず広く一人ひとりが当たり前に使えることが理想です。
次回からはMECEやロジックツリー、分析や仮説検証など具体的な手法を若手社員にもわかりやすく解説しながら事例を交えてご紹介していきます。
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