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【コラム(11)】思考に潜む認知バイアス

本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。

前回は組織をイノベーティブな有機的組織へと成熟させるダイアローグ(対話)についてご紹介しました。

【コラム(10)】対話を通じてイノベーティブな組織をつくるには

しかし、いかに有用な手法であっても、いざ実践してみると思ったようにうまくいかない……といった経験はありませんか? これにはさまざまな要因がありますが、今回はそのうの1つである、認知バイアスについてご紹介します。

思考過程に隠れた罠が

どんなに論理的に正しい判断を下そうと思っていても、思考の「偏り」や「錯覚」に陥ってしまうことがあります。そうした無意識のうちに認知のフィルターがかかることを “認知バイアス”と言い、上司や部下そしてあなた自身にも周到に隠れた罠のように潜んでいます。

認知バイアスは陥っていること自体にに気がつかないままになってしまうことが厄介です。もしかすると、知らず知らずのうちに認知バイアスによって偏った意見を出し合い、あなたの組織の意思決定が歪められているかもしれません。

認知バイアスの種類と事例

認知バイアスの種類は多岐にわたります。例えば ”人が計画を立てる時、実際にかかる時間よりも早く完了すると想定してしまう” という「計画錯誤」。これはノーベル経済学賞授賞者であるダニエル・カーネマン氏とエイモス・トベルスキー氏によって提唱されました。

計画錯誤では、遂行段階で現実的に起こりうる “邪魔ごと” を考慮できず、たとえ実際に計画を見直す必要に迫られる状況になっているにも関わらず「当初の予定通りになるはずだ」と思い込んでしまいます。

また、代表的な認知バイアスである「確証バイアス」。これは無意識に自分に都合のいい情報ばかりを集めてしまい、それに反する情報を無視したり収集自体を放棄してしまうことを言います。

例えば新しい市場への参入を検討していたとして、確証バイアスに囚われたまま調査・検討を行うのはどれだけ危険なことかは明らかでしょう。

他にも正常性バイアス、内集団バイアスなど、さまざまな認知バイアスが目に見えぬ思考の落とし穴として潜んでいます。組織の創造的思考においても、認知バイアスは極力なくすようにする必要があるのです。

ファクトフルネスを取り入れよう

認知バイアスは完全に取り除けるという性質のものではありませんが、意識し訓練することで悪影響を軽減させることができます。ここでは対策の1つであり、近年注目されている「ファクトフルネス」という考え方をご紹介しましょう。

スウェーデン人の医師で公衆衛生学者のハンス・ロスリング氏が人生最後の年を執筆に捧げた書籍『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』は世界的なベストセラーとなりました。

ハンスは著者の中で感染症の専門家としてアフリカ諸国でエボラ出血熱の収束へ向けて尽力してきた経験から、人間の恐怖や焦りなどの本能を克服し、データをもとに世界を見ることの重要性を解いています。

この本能を10の思い込みとして、分析しています。

・世界は分断されている(分断本能)
・世界はどんどん悪くなっている(ネガティブ本能)
・世界の人口はひたすら増え続ける(直線本能)
・危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう(恐怖本能)
・目の前の数字がいちばん重要だ(過大視本能)
・ひとつの例がすべてに当てはまる(パターン化本能)
・すべてはあらかじめ決まっている(宿命本能)
・世界は一つの切り口で理解できる(単純化本能)
・誰かを責めれば物事は解決する(犯人捜し本能)
・いますぐ手を打たないと大変なことになる(焦り本能)

 

前回のコラムでご紹介したダイヤローグをはじめ、あなたがもし組織の課題解決のために数あるツールや手法を実践しても成果が出ないのは、その判断課程に認知バイアスが潜んでいるからかもしれません。

認知バイアスから脱却し、データや事実から正しく物事を読み解くファクトフルネスは、あなた自身はもちろん組織全体に浸透させたい考え方です。

今シリーズのコラムは次回が最終回。これまで11回分の内容を振り返りながら、課題解決のプロであるコンサルタントという仕事について”考える” 視点からご紹介していきます。

1件のコメント

  1. ピンバック:【コラム(12)】多様化した課題を解決するには? – シンキングパートナーズ合同会社

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