本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
前回は目標達成のための自律的行動が可能な組織になるために、より具体的なマネジメント事例としてMBOやMBBについてご紹介しました。
今回は、さらに自律的行動について考えを深めるために「選択理論」をご紹介していきます。
ノルマ主義のような旧来のマネジメント手法では通用しない時代がやってきました。選択理論を知ることで、あなたの組織が目標へのコミットメントを高めるヒントになれば幸いです。
選択理論とは?
あなたは様々な「選択」を行う時、どんな思考のプロセスを経ているか説明できますか? もしくは、あなたの上司や部下が「どうしてこんな選択をしてしまうんだ」と思ったことはないでしょうか。
従来の心理学では、人は外的な要因に反応して行動すると考えられていました。例えば「電話の着信音があれば、その音に反応して人は電話を取る」といった考え方です。
よって行動を促すためには外的な刺激を与えればよいと考えられていました。
その結果、ミスをした部下を厳しく処罰したり厳しいノルマを課してプレッシャーをかけたりといった旧来のマネジメント手法が横行してしまっていました。
しかし、これで本当に求めていた成果は得られたでしょうか?
選択理論とは、米国の精神科医ウィリアム・グラッサー博士が提唱した新しい心理学です。理論自体は1960年代に生まれ、1996年に「選択理論」に名を改め知られるようになりました。
ここでは「すべての行動は自らの選択である」「外部にあるものは情報に過ぎない」と考えられています。
人の行動は、外部からの情報に反応して「本人が最善と判断したもの」を選択した結果。
怒りや罰といった外部からの刺激をどんなに強めたとしても、他人を思うようにコントロールできるわけではないのです。
それでは、ビジネスパーソンが選択理論をもとに目標達成のための自律的行動がとれるように促すにはどうすれば良いのでしょうか。
選択理論、5つの欲求
選択理論では、人が自ら選択を行うにあたって「生存」「愛・所属」「力」「自由」「楽しみ」という5つの欲求が基準になると考えられています。
「楽しみ」という欲求はプライベートの充実ではなく、新たな知識を得て成長したり、創造的な活動をしたいといった傾向を表しています。
貢献や承認といった「力」の欲求が強い人もいれば、自分のやりたいようにしたいという「自由」の欲求が強い人もいます。
これら5つの欲求が最も満たされている状態を選択理論では「上質世界」と呼ばれ、人はこの理想を求め、現実に近づくほど満たされていきます。
前回コラムの通り、目標達成のための自律的行動が可能な組織になるためには組織目標を共有し、個人の目標に落とし込み納得感を得られるようにすることが重要でした。MBBによって、たとえ難しい目標であってもノルマ強要といった旧来の手法に陥ることなく、達成へ向けて高いパフォーマンスを得られるでしょう。
そのためには、まず組織の目標を示した上で、各人がどうコミットするかを「自分で決める」「自分が関わって決める」よう促すのが第一歩です。そういった内発的な動機付けをいかにもたらすか? 今回の選択理論を知ることで、考えやすくなるのではないでしょうか。
そろそろ新年度が始まります。新型コロナウイルス感染拡大の影響はまだ予断を許さない状況ですが、未来へ向けて新しいチャレンジに取り組もうと思う方も多いのでは無いでしょうか。
次回からは、これまでのコラムでお伝えしてきたような未来を考えるアプローチをあなたの組織で実践する上で、障害となる要素や対処方法についてご紹介していきます。
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