本コラムは転換期を迎える現代のビジネスパーソンのために「考える」をテーマにしたトピックを毎月お届けしています。
前回は目標達成のために必要な自律化について、また自律的行動にとって重要な「目標意図」と「実行意図」についてご紹介しました。
企業のマネジメントにおいては、この個人の目標と組織にとって必要な目標が同じベクトルを向いていることが必要です。自分が担う役割や組織内での存在意義を深く捉え、目標を定めていきましょう。その上で実現に向けた実行意図が共にあることで、最も高い効果を得ることができます。
今回は目標意図について、より具体的なマネジメント例としてMBO(Management by objectives)とMBB(Management by Belief)についてご紹介していきます。
MBOとは、ピーター・ドラッカーが1954年に著書「現代の経営」で提唱した「目標による管理」と訳されるマネジメント手法です。
組織と個人の目標をすりあわせた上で、社員が自主的に目標を設定し、進捗や実行なども自身で管理します。これによって「やらされる感」が無くなり、より大きな成果を得られる手法で、日本には1960年代半に一度導入されるものの定着せず、バブル崩壊の90年代後半に成果主義導入に伴い、再びMBOに注目が集まりました。
しかし、ドラッカーの想いに反して運用が上手くいかず、本来のMBOができていないケースも指摘されています。例えば、結果を重視するあまり単なる評価ツールと化してしまうケース。プロセスが軽視されノルマ主義となり、個人のモチベーションが低下してしまったり、目標を低く設定してしまい、これでは「組織全体の成果が伸び悩む」という本来のMBO理念と逆のものへとなってしまいます。
目標管理制度は、ノルマ管理のツールではありません。本来であれば、社員が自分自身で考え、やりがいを感じながら実行し、結果として組織に貢献するためのマネジメント手法なのです。
思いのマネジメントで本来の目標による管理を
一方で、MBBとは「思いのマネジメント」と訳される手法です。ナレッジ・マネジメント分野の第一人者である一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が中心となって提唱されました。MBBは、個人・組織が持つ思いや価値観を互いに共有にした上で、それらを実現するための両者が納得いく目標設定を行います。
短期的な業務の目標を各個人が立てるというだけでなく、それぞれの人生における価値観や仕事の意義といったところとすり合わせることで、個人は自分の成長のためにも高いモチベーションを維持したまま業務に取り組み、おのずと組織の求める成果を出すようになるわけです。
MBOの目標設定のプロセスを人の思いを尊重し、自発化・自律的させ、共感を持って設定していく……それがMBBです。
目標達成のための自律的行動が可能な組織になるためには
このように、組織目標を共有し、個人の目標に落とし込み納得感を得られるようにすることが重要であるとわかりました。
また、前回ご紹介したif thenプランニングのように目標達成のための行動を習慣化できるよう落とし込み実践していくこともまた重要です。
最適化された目標意図×最適化された実行意図により、目標達成のための自律的行動が可能な組織を目指していきましょう。
次回は、そんな自律化された組織づくりのために理解しておきたい「選択理論」についてご紹介します。人間が行動を起こすとき、そこにはどんなプロセスを経ているのでしょうか? “考える” 切り口に解き明かしていきます。